レポート日記
一覧に戻るカジュアル?orモード? 淹れて、おいしい、日本のお茶。
開催日:2013年07月27日
通常授業
最近、自分でいれたお茶を飲んだのはいつですか…?
生徒さんに挙手して頂くと、今朝飲んだ、日常的に飲むという方が2~3人、と少数。
私も自分でいれるお茶とはだいぶご無沙汰でした。
今日はそんな[お茶の淹れ方を知りたい]方や、[お茶についてもっと知りたい]方々が集まる授業となりました。
今日の先生は、お茶の千代乃園の原島政司さんと、
元気計画で千代乃園のプロジェクトを手掛ける、デザイナーの三迫太郎さん。
まずは原島さんのお話から。
千代乃園は、お茶の普及やPRを行う、日本茶インストラクターやエコファーマー(お茶のソムリエ的な存在)の
認定を受け、お茶作りに励んでおられます。
ひと通り紹介をして頂くと早速、ウェルカムドリンクとして振る舞われた冷たいお茶を頂きました。
「これは何でしょう?」との問いに、指された着物の生徒さんが、「甘い…玉露?」と的中されていました。
玉露は茶棚の上に藁をかぶせ、ほぼ光を遮った状態で育てる、八女のものでは全国のうち3%という、
貴重な茶葉なのだそうです。氷出しで飲むのも、とっても美味しくなるとのこと。
原島さんの茶畑は標高550~650mにもなり(スカイツリーが500~650mほど)、高地では虫も少なく、夏場も涼しいとの事でした。減農薬に取り組まれており、無農薬にしない理由は、「人だって風邪をひけば薬を飲むし、年に一度は注射をするくらいがいいのでは」と、人を思いやるように語っていらしたのが印象的でした。肥料も木を痛めないよう発酵済を使用するなど、こだわりを感じるお話でした。
元々お茶は中国から伝来し、薬として上流の人々に飲まれていたものが時代を経て、一般に親しまれるようになったそうです。昔は各家庭で煎り、結納時には「くぎ茶(区切り茶)」、験かつぎの「朝茶」、厄払いの「打っ断ち(うったち)茶」など、節目ごとにも飲まれてきました。
他にも殺菌やカテキンなどの効能も注目されています。寿司屋でお茶が出るのも消化を助けるため理にかなっており、
名産地の静岡では1日に10杯ほど飲まれるらしく、ガンの発症を抑える効果もあるそうです。
ペットボトルより断然経済的。ぜひ家庭に茶器をおいて、日常に取り入れてほしいとの事でした。
ここで、最近は世界でも注目されてきたお茶。それを商品としてどうデザインしていくのかという視点から、
デザイナーの三迫さんにお話を伺っていきます。
三迫さんはちくご元気計画(厚労省の雇用創出事業)で複数の研究会を担当されており、webやリーフレット、
パッケージなどの作成も手掛けられています。
千代乃園における課題も、お客さんの高齢化や、独自の商品特性をどう伝えるかなど様々。新ブランドの立ち上げから、年末にかけて取り組まれるそうです。
ネーミング案は「雪降る山のおそぶき茶(仮)」。冬の千代乃園は高地という事もあり、30cmほどの分厚い雪に覆われます。とても厳しい寒さに思えるのですが、実はかまくらのように雪で守られているのだそうです。そのため収穫は少し市場の新茶より遅まり、価格の下がったタイミングでの出荷が課題でした。そこで敢えて「おそぶき」と言う。「遅いけど、うちは新茶です」と伝わればとの事でした。
商品展開も生活シーンや四季に合わせたり、お試しセットやギフトなどを検討中との事。パッケージは、雪をかぶる茶畑を形でくり抜いた案を、その場(原島さん含める)で初披露されていました(笑)。お仕事の裏側を見れたようで得した気分でした。ほか販売方法なども検討したのち、今年末までにはお披露目となる予定なのだそうです。
さあ、ここからはお昼の時間です。今日は黒木の研究会「たかっぽ」さんにお弁当をお願いしました。達筆なお品書きに巻かれた葉包みのお弁当箱で、素朴ながら贅沢な味がしました。食事向けに熱いお茶も出して頂きました。お弁当を食べながら、原島さんに生産者としてEUを訪問された時のお話をして頂きました。
6年ほど前からEUの力を借りて、福岡の農産物を輸出する取り組みをされており、厳しいチェックに動じない品質が評価され、お呼びがかかったそうです。ドイツやベルギーの見本市などで展示され、現地では「水」の調達に苦労されたらしく、行き着いたのが日本にもある「ボルヴィック」だったとの事。ほとんどの人が口に含む前にする「嗅ぐ」仕草に、ワイン文化を感じたそう。人との縁も繋がり、互いに行き来する交遊の後、大量の注文があったりと、とても実りある経験だったそうです。
食後のお茶まで頂き、少しグループで話したりひと呼吸ついたところで、
いざ、いれ方の実践を交えて教えて頂きます。今日は上選茶葉で行います。
なんと1人に1セットづつ、茶器セットが配膳されます(準備周到!)。
内容は湯呑みと茶托が各3、急須、湯冷まし、茶筒、ティースプーン。
いくつかポイントを教えて頂きました。
まず、茶器を選ぶ。
ここで配られた茶器は茶葉に合わせどれも小ぶりですが、玉露だともっと小さくていいのだそうです。
そして、水を選ぶ。
硬水や軟水など。日本では軟水がほとんどで、水道水でも湧かせば大丈夫になってきました。
それから、お湯の温度と量、茶葉の量。
お茶はし好品。決まりはないので、自分なりの方法で間違いはなし。工夫してほしいとの事でした。
1.急須に少しだけお湯を入れて中でまわす(あっためと清めるため)→湯冷ましにすてる。
2.全ての湯呑みに6~7分目までお湯を注ぐ。今日は周りの方と交換して味を比べるのと、人にもてなして欲しいとの思いで3つ準備されていました(軽く感動しました)。湯を冷ますと同時に湯呑みをあっためます。
3.↑を待つ間に、急須にティースプーンすりきり1杯(2gほど)の茶葉を入れます。ここで茶葉を観察。良い茶葉はよく揉まれていて、緑色がキレイでしっとりとしつつ、急須の中でよくすべるそうです。
4.湯呑みのお湯を全て急須に戻します。(ちなみにお湯の温度で湯気の立ち方も変わるらしく、80℃以上だと立ち上るように、70~60℃の適温では横に流れるような湯気になるそうです。)それからふたをして1分~1分半ほどしばらく待ちます。(1煎目、2煎目で葉の開き具合も見て時間は調節)
5.最後に湯呑み3つ分、量が均等になるように少しずつ順に注ぐ「まわし注ぎ」をしていきます。
これで一連の流れとなります。2煎目からは先ほどの湯冷ましを空にし、そこにお湯を注ぐ→待ってから急須(時間は調節)→湯呑みへ。となります。
近くの席の方と自分のお茶を交換すると、それぞれに違った味がしました。お菓子も頂き、そしてこれは私がこの日一番印象に残った事で、注がれるお茶の色や落ちる雫の奇麗さに、自分でいれながらに見とれ、感動してしまいました。
手間はかかるかもしれませんが、来客のもてなしも、丁寧にいれるだけで特別になると仰っていました。
ここからは3つに分かれてのグループワークです。「どうやったらお茶を飲むようになるだろう?」というテーマで話していきます。机ごとに生徒さん方の職業柄も活かされ、中々の白熱ぶりでした。
その後発表をして皆で共有していきます。
○茶器のデザインがよくなればいいのではないか?手紙に付けて送る、スタバのよう、に行ったらお茶をいれてくれるスタンドを設ける。
○ツアー体験を組む、学校の授業に取り入れる、いれ方を知ると教えたくなる、おを茶ブーム化する。どうお茶を伝えていくのかが大事。
○敷居を下げる。量やサイズも身近な感じにする。パッケージで親しみを持たせる。
ワーク後、三迫さんに、3グループ上手く分かれたアプローチを聞けてよかった、とのお言葉を頂きました。
最後に授業担当の江頭さんより、今日にかけた想いの共有と、投げかけがありました。
「以前は紅茶葉など、特に考えず買っていたが、原産国のスリランカに行った際、現地の厳しい労働状況を目の当たりにして、考えが変わった。作り手の想いを知ってほしかった。」との事でした。
【参加者アンケートより】
・お茶をいれることが、日々のゆとりを持つ事に繋がると思い、
お茶をいれるゆとりも失っている自分に気づいた。
・他の生徒さんの発表が解りやすくまとまっていて、見習いたいと思った。
こだわりは強みになり、発信する力になる。
・もっとお茶の良さ、美味しさをみんなに知って欲しい、
みんな手軽さ、安さに流されてお茶の本当良さを忘れかけている!
私も今回の授業で、お茶は身近なものでしたが、改めてその価値を再確認できました。この日何よりいれた瞬間の光景が目に焼き付いて離れません。人にもてなす事から始め、伝えて行こうと思いました。
実施に関わった皆さん、お疲れさまでした。
そして来て頂いた生徒さん、ありがとうございました。
(ボランティアスタッフ 立石 依里)
【今回の授業コーディネーター】
【今回の先生】
原島 政司 (お茶の千代乃園 代表/日本茶インストラクター)
【今回の教室】
住所 : 福岡市中央区天神2-2-43 ソラリアプラザ6F