レポート日記
一覧に戻る私だけの本屋 ~街が彩る一日~
開催日:2014年11月22日
通常授業
みなさん、一箱古本市って知ってますか?
毎年、秋に「けやき通り」で行われている1日限りのイベント。
僕もそこまでは知っていました。
が、そのルーツをたどると東京でライターをされている南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)さんという方にたどり着くという。
今回の授業は、福岡で一箱古本市を主催しているBOOKUOKAさんとのコラボ授業。
そして先生は、一箱古本市のアイデアを発案した、ライターの南陀楼綾繁さん、けやき通り・箱崎でブックスキューブリックという本屋を営みながら、BOOKUOKAを主催している大井実さん、出版社 忘羊社を営んでいる藤村興晴さん、という本に深く関わるお三方です。
まずはウォーミングアップとして、グループに分かれ、自己紹介と、授業に参加した動機・きっかけを話してもらいました。本好きのみなさんが集まっているだけあって話が弾み、短い時間で打ち解けた空気感に。みんな楽しそうに話をしている様子が印象的でした。
そして、ここからは先生3人の話を聞いていきます。まずは南陀楼さんに、一箱古本市のことを中心に話をうかがっていきました。
Q. なぜ東京の谷根千(やねせん)というエリアで一箱古本市を行おうと思ったのですか?
A. 年配の方向けの観光地である谷根千には本屋がたくさんあるのにガイドブックには載っていなかった。本好きの観点から地図を作ろうと思ったのがきっかけです。従来の本イベントはプロが本を売っていたスタイルでしたが、京都の下鴨神社で行われている野外のブックイベントが圧巻で、野外の雰囲気で何か面白いことができないかと考えているうちに、一箱古本市というアイデアに思い至りました。
Q. なぜ、一箱古本市がこれほどまでにウケたと思いますか?
A. 1日だけの本屋さんごっこがウケたんだと思います。今では、北は北海道、南は沖縄まで全国で100を超えるイベントになっています。一箱古本市はアナログなイベントだけど、その影響の広がりにはFacebookやtwitterなどのデジタルなツールが後押ししているのではないでしょうか。
その他、南陀楼さんのお話で印象的だったのは、90年代後半から本の読み方が変わってきたとのこと。
これまでは、本をじっくり読んで自分の中に取り入れるという「受動的な読書」が中心だったが、受けたものを外に発信する「能動的な読書」に変わってきたというお話。
確かに、本のイベントに参加して最近思うのは、本を通じて話がしたいという人がこんなにいたのかという事実。これも能動的なアウトプットをしていきたいという時代の変化の現れではないでしょうか。
次は、一箱古本市も含めたBOOKUOKAというイベントについて、大井さん・藤村さんに話を伺いました。
Q. 福岡での一箱古本市の始まりについて
A. 2006年に初めてBOOKUOKAというイベントを開催しました。その中心となるイベントが一箱古本市。それにプラスし、期間中を本のイベントで埋めつくすという試みを行ったのが始まりです。
メディアや広告が盛んに取り上げてくれたのも成功の原因かと思います。けやき通りという限られたエリアでのイベントでしたが、市を挙げたイベントのように盛り上げてくれたのは、メディアや広告の力も大きかったと思います。これは、東京とは違い地方都市ならではのいいところかもしれませんね。
Q. BOOKUOKAに対しての想いは?
A. 「街と本屋」というキーワードを持ちながら取り組んでいます。ちいさな個人店が集まって街ができる。そういうオーナーをつなげたい。一箱古本市では、お店の軒先を借りることで、そのつながりができる。一箱古本市だからできるコミュニケーションを大事にしたいと思っています。
Q. キューブリックも含めた本屋の今後について、どうお考えですか?
A. 普通の書店単体でやっていると商売として成り立ちません。しかし、実際にカフェ付きの本屋をやってみて、かなり可能性を感じています。夜にイベントもできるし、そうすることでお客さんとつながることができる。「本のある場所」が求められているのは実感しているし、社会的な意義も感じているので、これからの本屋として、街づくりという観点を持ちつつ取り組んでいければいいのかなと考えています。
と、どこまでも聞いていたい先生3人の熱いトークでしたが、時間の関係上、ここで第1部は一区切り。続いて第2部として、グループに分かれ、参加者のみなさんにワークショップ形式で話し合いをしてもらいました。
テーマは、「もし自分が一箱古本市に出店するなら『こんな本屋にしたい』、『こんなラインナップにしたい』」。
参加者のみなさんに持ってきてもらった「自分の好きな本」や、教室の周りにディスプレイされた本の数々(←なんとBOOKUOKAスタッフが持ち寄った本で一冊一冊興味を惹くものばかり!)に囲まれていたせいか、難しい課題ながらグループ内では活発な議論が行われていました。
そして、最後に各グループのまとめとして代表者に発表してもらいました。
・本と音楽って近いよね
・売られていく古本って、捨て猫に近いかも。本に鈴を付けて売る?
など、面白い視点から本を捉える意見も出て、各グループの発表にみんな真剣な顔つきで聞き入っていました。
今回の授業では、本好きという共通の思いを持っている方が集まり、先生方の熱い思いを聞き、熱のこもったディスカッションが行われました。この授業をきっかけに、新たな本に関するイベントやブックフェスティバルができるかも、そんな期待を持たせてくれた一日でした。
(ボランティアスタッフ 白石 隆義)
【今回の授業のコーディネーター】 吉開 崇人
1986年、福岡県生まれ。のんびり屋。本と星が好き。3周年企画のテン大図書館!をきっかけに、コーディネータとして授業づくりも担当。”好き”という気持ちを軸とした授業づくりに努める。テンジン大学のBOOKチームである【テン大books】を率いる。 BOOKUOKA2014ではボラスタチームの取り纏め役を担当。また、本と人とを繋ぐユニット“fuku book 廊”に所属。 |
【今回の先生】
南陀楼 綾繁 フリー編集者
1967年島根県出雲市生まれ。『季刊・本とコンピュータ』(トランスアート)誌の編集長を経て、2005年「不忍ブックストリート」を立ち上げ、その際、「一箱古本市」を開催。その後、「一箱古本市」は福岡のブックオカや名古屋のブックマークナゴヤほか、全国数十カ所で行われる人気の古本フリーマーケットとして定着。またライターとしても「彷書月刊」、をはじめ各種ミニコミ誌に多くの文章を寄稿。著書に『路上派遊書日記』(右文書院)『谷根千ちいさなお店散歩』(WAVE出版)、『一箱古本市の歩き方』(光文社)、『小説検定』(新潮文庫、近刊)など。 |
大井 実 ブックスキューブリック店主
1961年福岡市生まれ。同志社大学文学部卒。東京・大阪でイベント制作などに携わった後、2001年福岡市のけやき通りにブックスキューブリック開業。2006年、福岡の書店・出版業界有志とともにブックオカを立ち上げる。2008年箱崎店開業。 |
藤村 興晴 忘羊社 代表
1974年兵庫県尼崎市生まれ。1994年から福岡の出版社「石風社」で書籍編集・営業に携わる。2000年、福岡の出版社合同のフリーペーパー「はかた版元新聞」の編集実務を手がける。2006年、福岡の書店・出版業界有志とともにブックオカを立ち上げる。2013年独立。 |
【今回の教室】 赤煉瓦文化館
明治時代の我が国を代表する建築家・辰野金吾と片岡安の設計により、 日本生命保険株式会社九州支店として明治42年(1909)に竣工。 赤煉瓦と白い花崗岩の外壁は19世紀末のイギリス様式で、ほかに尖塔やドームなど、小規模ながら変化に富んでいる建物。福岡市歴史資料館として使用された後、有料の会議室等を備えた市民に開かれた施設「赤煉瓦文化館」としてオープン。平成14年(2002)からは1階の一部が「福岡市文学館」として使用され、 文学に関するさまざまな情報を収集・提供している。国の重要文化財。 住所 : 福岡市中央区天神1-15-30
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※駐車場・駐輪場がありません。公共交通機関を利用するか、近くのパーキング・駐輪場をご利用ください。