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難関ダンジョンでカブトガニを探せ!

開催日:2015年08月29日

通常授業

生きた化石・カブトガニ!

「知ってはいるけど本当にいるの?」

とお思いの方も多いのではないでしょうか。

 

ところがそのカブトガニ、なんと福岡市内にいるんです!

今回は天神を少し離れてそんな貴重な体験に行って来ました。

 

集合場所は九大学研都市駅。ここから昭和バスに揺られて今津公民館へ向かいます。

天神からはおよそ1時間くらいです。

景色もあっという間に都心のものとは様変わりしました。

 

今津に着くとまずは公民館で先生のスライドショー。

 

 

 

 

先生の久保園遥さんは

「小学二年生からカブトガニを観察しているので、もう12年になりますね!」

という、大カブトガニラバーです(!)

 

普段は自分のやりたいことに合わせて研究が出来る九大21世紀プログラムで

海洋生物学や保全生態学、水産の勉強をされています。

テーマはモチロン干潟とカブトガニ!

 

 

さて、今回の会場は今津干潟。

山、川、湾が凝縮された地形をしていて、

季節や潮の満ち引き、時間帯によって風景も全く別に見えるほどに表情を変える場所です。

 

干潟にはカブトガニ以外にも多種多様な生物が生息しています。

 

例えばカニだけでも様々な種類がいて、

目だけを出して移動したり、干潟でなく岩場に生息地を持っていたりとその生体は様々なんだそうですよ。

 

生息の他にも、干潟には鳥の残した足跡や流れ着いた青海苔も見えます。

「干潟に行ったときは生き物の残した痕跡も見つけてみてください」

 

 

続いてはメインのカブトガニのお話。

 

ここでは先生のカブトガニへの愛情が大爆発!

ビックリする様な話が次々と飛び出します。

 

 

 

 

(あまりに沢山出たので、ここではその一部を箇条書きで)

 

・カブトガニは一度ペアになったらずっとひっ付いたままになる!

  ちなみに上がオスで下がメスです。

「メスの数が少ないから、オスは必死にしがみつくんでしょうね」

 

・卵自体が脱皮します!

 日が経つ毎に卵の色が変わって行き、透明な卵のなかでカブトガニがくるくる回っている姿が見られます。

 そしてふ化した後もカブトガニは脱皮を十数回も重ね、数センチから約60センチ以上にまで成長します。

 

・田んぼに居るカブトエビって関係あるの?

 別物です。カブトガニはサソリやクモの仲間で、カブトエビはエビの仲間なんだとか。

 形が似ているのは、ドロドロした所で生きるのに適した形に進化したからという説があります。

 近い例えで言うと、空を飛ぶために蝶々や鳥、コウモリが羽を生やしたのと同じニュアンスですね。

 

・生きた化石、と呼ばれるのは二億年前からその姿でいるから。

 二億年は恐竜の生まれる前!

 彼ら(?)は恐竜の餌になる危険や氷河期を乗り越えて現代も生存していたんです!

 

・なんで生き延びたのか?それは食べ物をあまり必要としないから。

 実験では海水を入れ替えれば一年間生き延びた、とか。

 カブトガニは体にラクダのこぶみたく栄養を蓄える部分を持っています。

 

・カブトガニの血は青い。

 人間の血が赤いのは鉄が混ざっているからでして、カブトガニの青い血は銅によるものです。

 これは生物界でもとても珍しく、しかもものスンンゴイ免疫力を持っています。

 その免疫力を医学に使えないか、という研究も進んでおり、

 将来エイズウイルスの特効薬になるのでは、とまで言われています。

 

 夢が有りますね。

 

こんな話題が先生から次々に飛び出し、教室では

「へー!」

の声が止まりません。

 

 

でも、そんなカブトガニが絶滅危惧種と言われているのは何故なのでしょう?

 

その一番の原因は海辺の埋め立てと言われています。

生きる環境に砂浜や干潟が必須なカブトガニの行き場が無くなっているんですね。

 

では今カブトガニは日本のどこに生息しているのか?

それはなんと九州の北部と瀬戸内海の一部(!)10ヶ所も無いくらいでしょうか。

 

そして、

「今津干潟は絶滅危惧種の生息している貴重な地域」

なんだそうです。

 

スライドの終盤には教室にカブトガニが到着しました!

(カブトガニはこの後すぐ干潟へ還しました)

 

 

 

 

主役の登場です。

初めて見た人からは

「動いてるー!」

という声も。

 

「ここが割れて脱皮を..」

「手のひらにに乗せてみますか?」

「うわっ!動いたー」

「結構足が出るんですね。それに速い!」

 

実物を目にするとまた盛り上がりますね。

 

そしていよいよ干潟へ

 

 

 

 

グループに分かれて散策です。

 

と、分かれてすぐにカブトガニを発見!

いやはや本当にいるんですね。

「見つからないと思ってた」という声もチラホラ。

 

実際に生息している姿には皆さん一同に驚かれていました。

 

 

 

 

そして、カブトガニは続けざまに見つかります。

「え!こんなにいるの?」

「知らないうちに踏んでるかも」

 

カブトガニ以外には、なんと縦に歩くカニ(マメコブシガニ)も見つかりました。

「古い種類のカニは元々縦歩きなんです。進化の過程で横歩きになったそうです」

とは先生の解説。

 

皆さん、小雨交じりの中で足を取られながらも夢中に干潟を覗きこんでいます。

「僕たちがハマったのは、干潟ではなくカブトガニの魅力でした!」

なんて仰る方もいましたよ。

 

帰り道ではまた先生からの豆知識が。

「カブトガニといえば天然記念物というイメージですが、

 実はカブトガニではなくカブトガニのいる海が天然記念物になるんです。

 ここ(今津干潟)は漁業も営まれているので天然記念物ではありませんが、

 干潟全体が天然記念物になっている地域も九州にはあるんですよ」

(ふむふむ)

 

再び今津公民館に戻って、最後は干潟で見た生物の図鑑づくりです。

 

自分で撮った写真を見返したり、はたまた記憶を呼び覚ましながら(?)、それぞれにイラストを描いて行きます。

 

 

 

 

発表ではカブトガニ、カニ、クラゲ、手長エビ、アメーバの様な生き物(!)等々、

意外に被ることもなく様々なものが出てきました。

「胴体に比べて手が長くて〜」

と、鋭い洞察の入ったイラストもあります。

 

そして最後に、コーディネイターの峰さんからこの授業をつくった理由の話です。

「この授業を考えたきっかけは、福岡市内で生まれ育った私にとって自然との接点は少なくて、

 そんな人にとって自然と触れ合える機会を作りたい気持ちでした。

 そして、今回の先生の久保園さんに相談したら、

 実は海のゴミは都市からのゴミが流れ着いたことを知ったのです」

 

先生

「みなさんに先ずお聞きしますが、今日干潟でゴミは見つけましたか?

 ポイ捨てのゴミは最終的には博多湾など海へ行きます。(特に博多湾はゴミがたまりやすい!)

 例えば瀬戸内海のある町からは、町なかの清掃をずっとやっていると海が綺麗になったという話も聞いています。

 そして博多湾のゴミ処理には年間数千万円掛かっています。

 

 もし干潟へのゴミが減ると、、、

 みなさんが食べる魚を守ったり、防災になったり、海をろ過する事ができます。」

 

ここで先生から一枚の写真が映されました。それはゴミの溜まった地元の海。

「この写真への感想を教えてください」

 

 

 

 

話はとても盛り上がります。

僕もつい色々と考えてしまいました。

 

そして最後に先生の久保園さんの活動紹介のビデオを皆さんで見ました。

 

Q-NERS(キューネルス)は久保園さんの思いから生まれ、今では学内から広くメンバーが集まっています。

彼らはデータや国際会議で学んだことを広く市民・子供達に伝え、

主体的に考え行動する人を増やす理念のもとに活動を行なっています。

 

例えばこんな数字。

ここ数年でおよそ1600匹いたカブトガニは200体ほどに減少しました。

それと同じく日本中で干潟の数も大きく減っています。

(少し切なく、でもだからこそもっとカブトガニを大切にしたくなりました。)

 

 

 

 

先生も私たちも、この干潟での体験への入り口はカブトガニへの好奇心でした。

そこで感じるカブトガニや干潟の現状が環境問題を身近に考える入り口になるんだなぁ、と感じています。

(ボランティアスタッフ 山路祐一郎)


 

【今回の授業のコーディネーター】峰 萌絵 現役大学生

 

  九州大学21世紀プログラム所属の現役大学生。大学入学直前にgreenbirdに参加したことによりテンジン大学の存在を知り、2014年5月からテンジン大学のインターン生として活動中。様々な社会問題に興味があり、特に労働に関する問題に関心があり現在勉強中です。盛り上げるのが得意なので、盛り上げ役は任せてください!!

 


 

 

【今回の先生】久保園 遥 九州大学21世紀プログラム

 

  九州大学自然環境研究会Q-NERS代表であり、九州大学21世紀プログラムの現役大学生。北九州の曽根干潟で7才の頃からカブトガニの観察を続けている。大学入学後は海洋生物学や水産の勉強に励む傍ら、Q-NERSを設立。福岡市今津干潟でのフィールドワーク、環境保全活動を行っている。Q-NERSの活動を紹介するビデオがUBrainTV株式会社Future Design by Students で奨励賞受賞。宗像国際環境100人会議や国連生物多様性条約第12回締結国会議COP12などの国際会議にも参加し、世界規模での環境問題についても学んでいる。日本カブトガニを守る会公開講座でのパネルディスカッション、カブトガニ国際ワークショップでのポスターセッションなどの経験あり。

 


 

【今回の教室】 今津公民館

 

 

今津干潟より歩いて10分程度のところに位置する。今津は山に海に、自然に囲まれた場所であるが、実は現行防塁など歴史的な史跡にも恵まれた場所である。この公民館は、その魅力あふれる今津周辺に住む人の憩いの場として利用されている。若者とともに公民館を作っていくため、九大生など大学生による利用を応援している。

住所 : 福岡県福岡市西区今津734-1