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レポート日記

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鐘崎クルージング〜宗像海人族の末裔に聞く、海の歴史〜

開催日:2015年10月24日

通常授業

宗像と聞いて、まず何を思い浮かべますか?

宗像大社、道の駅むなかた、世界遺産候補の沖ノ島、みあれ祭・・・

 

 

 

じつは、海にまつわる名所や神事の多いこの宗像。

今回の先生は、この地で先祖代々漁師の家に生まれ、

現在20名弱の船員とともに6隻の船団を組み、

玄海灘で漁をされている漁師歴43年の海人族、宗岡 譲さん。

漁船でクルージングをしながら漁のお話や沖ノ島に代表される伝統文化、信仰神事などについてお話を聞いてきました。

まずは、日本銀行裏に集合。
今日のスケジュールを確認したら2台の車に分かれて宗像市へ出発!
車内では、軽い自己紹介からなぜこの授業に参加したのか、

いままでどんな授業に参加したことがあるかなど、話が盛り上がりました。

 

 

 

 

途中、お昼ごはんに立ち寄ったのは地元では知る人ぞ知る「玄海バーガー」。
唐津バーガーのようなご当地名物を目指しているのだとか。

のちにわかったのですが、こちらのご主人、今回の先生のお知り合いで元々漁師さんだったそうです!偶然とはいえ本当にビックリ。

 

 

鐘崎漁港につきました~!気持ちの良い秋晴れです!

漁港の目の前にある、水揚げされた鮮魚などのいけすを見学しました。
トラフクやアナゴやイカ、カワハギ、アナゴなどがいました。

船着き場を漁船の説明をしていただきながら乗船する漁船の停泊しているところまで歩きます。

そして、いよいよ今回のメインイベント!漁船クルージングの時間です。
みんなワクワクしながら漁船に乗り込みます。落ちても大丈夫?なように救命胴衣を着用。

「いざ、出港~!」

 

 

 

想像以上の漁船のスピードと波しぶきに歓声が上がります。
海風がここちよく水面がキラキラと眩しいです。

 

しばらくすると、先生から

先生 「は~い!ここ、ポイントです。覚えておいてくださいね~!」
生徒さん 「ん?」 「何が?」

しばらくまた進むと、
先生 「ここがもう一つのポイントですよ~!」
生徒さん 「???」 「・・・?」

あとで陸に上がって改めてご説明いただきましたが、

実はそのポイントが例の釣鐘が沈んでいるといわれているポイントだそうで。
二つの謂れがあるため、2か所だったんですね。
意外と陸からそんな沖合じゃなかったのでびっくりしました。

 

 

 

あいにく視界不良で残念ながら沖ノ島は拝めず・・・

代わりに、地島をぐるりと一周してきました。

 

港が近づいてくると、最後のラストスパート!

まさかの全速力?で港まで突っ込みます!
みなさん、まったりとクルージングを楽しんでいましたが最後の最後、

アトラクションのようなスピード感にふたたび絶叫にも似た歓声が笑。

 

ほんとに岸壁に激突するんじゃないと冷や冷やしましたが、そこはプロ中のプロ。
車がピタッと駐車するみたいに、いとも容易く岸壁にピタリと着岸されました。

約45分のクルージングが無事終了。
波が穏やかで船があまり揺れなかったので、

誰ひとり船酔いせず、何も落とさず、そして誰も落ちずに済みました。

クルージング中に、先生から「ここがポイントです!」と教わった、釣鐘が沈むとされる『沈鐘伝説』。

そのお話しにゆかりのある、織端神社へ参拝に向かいます。

地元では“シキハン様”と親しまれ、漁師の妻は夫が漁に出ると航海安全を祈りにここを訪れるそうです。

 

 

 

『鐘ノ岬の沖には異国から渡来した釣鐘が沈んでいるという「沈鐘」の伝承があり、

大正時代に引き揚げられたが、それは釣鐘ではなく巨石であった。』とのこと。

その巨石がこちらの参道脇に置かれています。
それでもなお、釣鐘が沈んでいると信じられているそうです。

 

ほかにも、じつは鐘崎が西日本の海女発祥の地だそうで。

現在も60、70代の海女さんお二人が現役でご活躍とのこと。
福岡にも海女さんがいたなんて全く知りませんでした。

 

 

お話しの続きは宗岡先生のお宅へ。

 

奥様のご厚意でヤズのお刺身をいただきました。
生徒さんも大興奮~!こんなにおいしいお刺身はなかなか味わえません。

 

お酒も出てきて、もうすっかり宴会のよう。
お酒が大好きな先生。

ほろ酔いになりながらもしっかりと漁についてお話しいただきました。

 

 

 

 

漁は月の満ち欠けに影響を受けているため、太陽暦ではなく旧暦のカレンダーで年間の

漁のスケジュールが決まってくるとの事。
満月の前後は月光が明るいため、漁ができないというのは知りませんでした。

 

 

 

 

昔の羅針盤は(いまでも?)英数字ではなく、

十二支で方角が描かれており、面舵(おもかじ)は右にまわすことだと思っていましたが、

実は‘うかじ’ともいい‘う’卯は(3時)東の方向、取り舵(とりかじ)は単に左ではなく、

十二支でいう‘とり’酉(9時)西の方向にまわすという意味なのだそう。

 

こうやっていろいろなお話を聞いてみると、

伝統や歴史的なものが今でも生活に根付いていて、それを守ることが、

ひいては海を守ること、漁業を守り家族を守ることだったんだと改めて感じました。

私たちが日頃、博多の自慢としていただいているお刺身や呼子のイカや下関のフクだって、

この漁師さんたちが自然と共存し、時には命がけで戦ってこられたおかげで食してこられたのです。

これからもこの思いを忘れず、海や漁師さんに感謝しておさかなをいただきたいと思います。

これからの宗像、鐘崎の発展、そして漁業関係者の航海安全、大漁を祈願致しまして・・・

トーエベッサン!

(トーエベッサンとは航海の安全と大漁を願う言葉です)

 

 

 

(ボランティアスタッフ みつせ くみこ)

 


 

【今回の授業のコーディネーター】 谷口 竜平 福岡テンジン大学授業企画統括

 

1980年生まれ。福岡県宗像市出身。福岡テンジン大学において年間50以上行われる”授業”の授業企画を作成するコーディネーターの育成など、全体マネジメントを行う。本業においてはブランディングディレクター・デザイナーとして企業・団体、商品・サービスなどのミッション、ビジョンの整理・制作、ブランドづくり、コンセプトメイキング、事業戦略のコンサルティング、ネーミング・ロゴ・ツール制作からプロモーションなどの広告企画・制作、プロジェクトからワークショップなどのマネジメントやファシリテーションなど多岐にわたって活動。セルフリノベーション複合施設、北九州市立大学にて文部科学省GP事業、博多伝統工芸の商品開発プロジェクトのブランディングなどに携わる。目に見える形のデザインだけでなく、モノゴトの形を作っていくためのプロセスのデザインから行っている。その他に地元宗像の過疎化エリアにある実家と山中にある土地の利活用事業も展開。

 

 

 


 

【今回の先生】 宗岡 讓 共進水産有限会社 代表取締役

 

福岡県宗像郡玄海町鐘崎(現在の宗像市鐘崎)にて昭和29年に、以前は網元と呼ばれた代々漁師の家で生を受ける。岬小学校(今は統合されてありません)、玄海中学、そして宗像高校をなんとか退学にならず卒業。卒業後すぐにフクはえ縄漁船に乗船、いきなり21日間の海上生活で漁師の厳しさを体験。22歳でフク延縄船の船長、24歳で巻き網附属の運搬船船長、30歳をいくつか過ぎた頃に父の病気のため巻き網本船船長になる。多い時は30名、現在は21名の乗組員と共に6隻の船団を組み玄界灘を駆け巡り魚群を探し網を入れる。今年43年目を迎えた漁師です。

 

 


 

【今回の教室】 鐘崎漁港

 

天神から車で約1時間程度の場所。宗像市の海沿いに位置する鐘崎は、宗像地方有数の漁港であり、トラフグやヤリイカ、アジなどの沢山の魚介類が揚げられ、フグは下関産として唐戸市場に出荷。また、西日本の海女の発祥の地とも言われています。

住所 : 福岡県宗像市鐘崎