レポート日記
一覧に戻る知ってるようでよく知らない医療の世界 ~うつ病の話~
開催日:2011年04月23日
通常授業
【今回の先生】 原 祐一 (特定医療法人 原土井病院 副理事長)
【今回の教室】 あいれふ8F婦人会館 視聴覚室B
今回の授業のテーマは「うつ病」についてでした。
「うつ病」と聞いてみなさんはどのようなイメージを持たれますか?
日頃生活する中で、人間関係に疲れたり、落ち込んだりすることはよくあると思います。「うつ病」がその延長にあると思えば身近なのですが、「病気」と思うとよく解らない、あまり人に聞けない話題のように思えてきます。
もし周りの家族、友人などがそうなってしまったら、どう向き合い、接すればいいのか、今日は市内の原土井病院で医師をなされている原先生にお話を伺います。
○「うつ病」とは?
まずは病気と言っても症状は色々あり、例えば風邪はウイルス、骨折は外からの力、糖尿病は遺伝や生活習慣などが原因です。
その中で「うつ病」は心の病気と言えます。
ここで先生より質問が飛びます。
「うつ病の原因はどちらでしょう?」
心理的なきっかけ or 生まれ持った気質
大多数の生徒さんが前者に挙手、しかし実際は生まれ持った気質からという説の方が有力で、医学的には遺伝とされているそうです。
有病率は全人口の3~5%で、女性の方が男性よりも2倍ほどかかる傾向にあり、病前性格として、真面目、正義感が強い人や、頭がいい人に多いそうです。糖尿病にインスリンが必要とされるように、うつ病にも「セロトニン」という成分が関わっており、環境にもよりますが、これが少ない人が掛かり易い傾向もあるそうです。
症状は気分の落ち込みや空虚感、親しみや現実感が沸かない、生きていても仕方ないと思う、判断力や記憶力の低下、仮認知症(高齢者がうつ病になると認知症との区別がつきにくくなる)、妄想、その他精神運動抑制、睡眠障害、食欲低下などがあります。
原因は統合失調症や感情障害による内因性、神経症による心因性、
脳挫傷後後遺症による人格変化による外因性などとされています
○治療で注意する点
1、正確な診断
2、休養
3、患者の気持ちに共感
4、治る病気である事の説明
5、自殺しないように約束
6、重大な決定の延期
7、励ますことは禁忌→頑張れないのがうつ病。
他にPTSDなどの神経性障害や、他精神障害についても事細かに説明がなされていきます。
なぜこんなに細かく分けるのか?
→対応が分かれるから。
ひとまとめに「うつ病」と考えていませんか?との先生からの問いかけ。
考えさせられました。
ここまでで一度先生に質問をしていきます。
Q、1~3ヵ月の治療で治るそうですが、再発する事はありますか?
A、再発率は高いです。人により3~4ヵ月治療する事もあります。
Q、一般の人が出来る事は何ですか?
A、・休める環境を作ること、特に主婦などは常に家事などに追われて治りにくいため、入院してもらうケースもあるそうです。
・話を聞いて共感すること
・音楽を流す
アップテンポな曲にはついていけないので、スローな曲を選ぶ、など
Q、「励ましはタブー」だと言われますが、そろそろ励ましてもいいのでは?と感じる時はどうすればいい?
A、確かに配慮のし過ぎは社会復帰の妨げになる、本人と良く話し、判断して欲しい。
Q、自殺予防に「約束をする」とありますが、一般の人でもできますか?
A、深く話せるのであれば可能。ただ医者と患者の立場だから話せる事はある。例えば医者は身内は診断が甘くなるのを避けるため、あえて知らない医者に紹介したりします。
Q、「治った」という基準はありますか?
A、診断基準に当てはまらなくなったら。また、本人が「元に戻った」と思えば、診察にも来なくなります。
Q、「うつ病」に薬はありますか?
A、セロトニンを増やす薬が一般的で、20年程前から使われ始めて、治癒率は格段に上がりました。
-自殺について-
年間約33,000人、男女比は男2.5:女1。60代に多いそうです。
試みるのが女性が多いのに対し、完遂してしまうのは男性が多いといえます。
危険因子としては
・未遂(一度失敗してしまうと再びやってしまうケースが多い)
・サポート不足(未婚者が多い、近親者の死亡など)
・アルコール(統合失調症、精神疾患を誘発)
・周囲の自殺
たとえば父親が自殺した息子は、父親のその年齢になるまでに自分は死ぬのではないかと不安だったりする。実際その年齢を迎えてしまえば解放され、ラクになったりもするそうです。
-自殺に対する対応-
もし、「自殺したい」と言われてしまったら・・・
・時間をかけて話を聞く。
・批判はしない。
・沈黙を共有してもいい。
・最終的には専門家の治療を受けるように助言する。
先生の話はここで一段落。
続いてチェックシートで自己診断をしていきます。
教室はとても静かで、皆さん真剣に自分と向き合っている様子でした。
最後にもう一度質疑応答。
今度は直接聞き辛い事は匿名で用紙に書いてもらい、コーデイネーターが代理で先生に質問を投げかけていきます。
Q、高齢者の場合、うつか認知症か判断するにはどうすればよい?
A、精神科に診てもらう、専門家はすぐに判断できます。
Q、統合失調症などを患ってしまった人の、家族が相談できる所はありますか?
A、精神保健福祉士(PSW)が相談にのってくれます。
Q、うつ病になりつつあるなと思う人がいる場合、それを本人に伝えても良い?
A、様子がおかしい、心配だから診察に言ってみては?と伝えてみては?うつにも早期発見、早期治療が有効です。本人には病院を調べるのも億劫なので、調べて、教えてあげるのもいいかもしれません。
Q、うつ病かどうかの見極め方は?
A、難しい所もあります。単に疲れているだけかも。
どのような状態か
・ため息が多い
・普段やっている事が出来なくなった
・出勤、登校しなくなった
など。
Q、自分でかからないように、心掛けられる事はありますか?
A、・疲れたら、休む。
・頑張り過ぎない。
・自分のストレス対処法を理解しておく。
・趣味を持つ
・かかりつけ医を持っておくこと
・専門家が専門家に紹介するのが一番いい。
・精神科でも内科でもいいので「かかりつけ医」をきめておくのが一番良い。
皆さんとても真剣に聞き入ってあり、自分の問題としても、周りにうつ病の人がいる方でも、「なんとかしたい」という想いを感じた授業でした。
(ボランティアスタッフ 立石 依里)