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レポート日記

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人形師として生きること ~博多人形とは何か~

開催日:2011年03月28日

コラボレーション授業

【今回の先生】 中村 信喬 (人形師)

 

【今回の教室】 福岡三越 9F 三越ギャラリー

 

 

【特別授業】 九州大学社会連携事業による授業

この授業は、九州大学が「より良い社会の実現」に向けて、学内の様々な全英知、設備、研究組織と、地域・行政・社会貢献団体などと連携する取組です。今年度は、教育学部を主体として福岡テンジン大学と連携し、授業の企画を行ってまいります。

九州大学 社会連携推進室 : http://www.kyushu-u.ac.jp/university/coopration/policy.php

 

 

今回の授業は、博多人形師の中村信喬さんの個展「『中村信喬の世界』~ヨーロッパから日本へ、そして再びヨーロッパへ 祈りから生まれたひとがた~」におじゃまし、ご本人に、「博多人形とは何か」について、お話をして頂きました。

 

 

もともと今回の授業は、九州大学で田北先生が開講されている「まちづくり基礎論」という講義の中で、「テンジン大学の授業を企画してみよう」という授業があり、私たちの班では「博多人形についての授業をやってみたい」と企画したところから始まりました。

 

 

福岡に住んでいるけど、博多人形について知っていることって意外に少なかったりしませんか?

 

 

今回の授業では、博多文化の代表とも言える博多人形について博多人形の基本的な知識から信喬さんの人形師としての生き方もお聞きしつつ、一味違った博多人形の楽しみ方ができるようになってもらえればと思いながら企画しました。

 

 

教室となったのは、三越ギャラリーで開催されていた中村さんの個展会場の一角で、中村さんの多数の作品に囲まれながらの授業でした。平日のお昼ということもあり参加者は少なかったのですが、みんなで中村さんを囲みながらお話を聞くという、とてもアットホームな雰囲気の中で授業をすることが出来ました。

 

まず最初に、会場に展示されている信喬さんの作品を自由に鑑賞しました。鑑賞が終わると、私たちスタッフがいくつかのキーワードを切り口に中村さんに博多人形についてお聞きするという、トーク形式の授業となりました。

 

 

 

 

■キーワード1:「そもそも博多人形って?」

博多人形といえば“髪を結って着物を着た色白の女性…”というようなイメージはないですか?

 

でも、中村さんの作品は南蛮人や琉球の少年、モンゴルの偉人などがモチーフとなっており、私たちが持っていた博多人形のイメージはガラっと変わりました。そこで、「そもそも博多人形ってなんだろう?」疑問に思い質問させていただきました。

 

博多人形はもともと博多土人形と呼ばれており、黒田藩の土人形の献上だったそうです。今のように絵付けがされるようになったのは明治時代から、ということ。そして、私たちが博多人形と聞いて想像するような博多人形が登場したのは戦後からで、特に高度成長期には博多人形が全国的に流行し、大量生産で安価な博多人形が出回ったということです。

 

 

 

 

■キーワード2:「人形が動いて見える!」

中村さんの作品を見ていると、人形が今にも動き出しそうで、まるで生きているような印象を受けます。

 

これは、中村さんもこだわっているポイントだそうです。中村さんは人形を作る時は、風景の中で人形が動いている映像が常に頭の中に浮かぶそうです。そうすることでイキイキとした人形が出来上がり、そして、人形を見る人はさらに感動することが出来る、ということです。

 

 

 

 

信喬さんは「人形とは、その名のとおり“人のかたち”をしているから一つの教育の手段になることができる」とおしゃっていました。人形を大切にすることで自分自身も周りの人も傷つけることなく大事にできるような人間に育つそうです。そして、信喬さんはこのような「人のため」、「誰かの幸せのため」という祈りを込めて人形を作っていらっしゃるとお話してくださりました。

 

私たちも普段の生活の中で、ゴミが落ちていたら拾うとか、人に嫌なことをしないとか、困っている人がいたらお手伝いするとか、ちょっとした思いやりの気持ちが大切なんだな、と当たり前のことなんですが、とても考えさせられるお話でした。ここで、信喬さんの人形師としての生き方を学ぶことが出来ました。

 

 

■キーワード3:「博多人形の楽しみ方とは?」

博多人形を目の前にしても、一応見ることは出来るのですが、鑑賞するということになれば、素人には難しいものです。

 

そこで、ズバリ!!博多人形の楽しみ方、鑑賞の仕方をプロ中のプロに質問させていただきました!信喬さんいわく、人形がいる場面や人形のストーリーなどを想像しながら見てほしいということでした。信喬さんにとっての一番の褒め言葉は「いい景色だね~」と言ってもらえることだそうです。

 

 

 

 

トークが終わると、もう一度信喬さんの作品を見たり、参加者同士でシェアリングしたり、自由に各々で信喬さんのお話をフィードバックできる時間を設けました。みなさん、信喬さんのお話を聞いて、最初に見た時とは違った見方・楽しみ方ができたのではないでしょうか。

 

 

 

 

今回の授業を終えて、ちょっとだけ博多人形に詳しくなれました。福岡に住んでいれば、これから博多人形を目にする機会もあるでしょう。そんな時に、今回学んだことを隣の人に教えてあげたり、「ここはこうなんだよなぁ~」とかちょっと通っぽく、博多人形を楽しめると思います。なんだか街の中に楽しみがひとつ増えた気がします。

 

そして、信喬さんの人形師としての気概にも触れることができ、人としての大切なこと、人生の生き方の勉強にもなりました。

 

(九州大学大学生 横石 紗季)