レポート日記
一覧に戻る[開校1周年記念授業] あなたとまちの未来の作り方
開催日:2011年09月23日
通常授業
【今回の教室】 福岡市役所本庁・15階講堂
2010年9月23日(祝)に開校してからちょうど1年、大きな想いと多くの思惑に囲まれて、設立支援サポーターや、授業コーディネーター・スタッフ・先生・教室の協力もあり、福岡テンジン大学は運営を行ってきました。開校1周年となる今回の授業は「授業の中でアクションプランが出てきて、実際に行動を起こす人が出てくるような・・・」というイメージを共働事業でパートナーの中央区役所で打合せしているときに出てきた言葉を体現したいという企画。それは、福岡テンジン大学が、多くの街の生徒から成り立ち、参加するだけでまちづくりに繋がり、参加者から街のプロデューサーが出てきて欲しいという、私・岩永の強い想いでもあります。そこで出てきたのが「フューチャーサーチ」という手法です。
■フューチャーサーチとは
マーヴィン・ワイスボード氏とサンドラ・ジャノフ氏によって1987年に提唱され、95年に現在の形に完成された民主的な話し合いによって、望ましい未来を探究し、共創を生み出すミーティングの手法。通常3日間の、過去を認め、今を認識し、未来を創るという3部構成で、ステーク(利害・立場の近い)グループと、ミックス(ステークを均等に混ぜた)グループの2つのグループで対話を進めるもの。
■岩永学長プレゼン
開校1周年ということで、1年間の成果として参加者アンケートの集計結果や、今後の展望などを短くプレゼン。「学び×対話」により、人が動き、街が動く仕掛けを行っていきたい、ということを発表させていただきました。
そしていよいよ、フューチャーサーチのスタートです。通常、3日間のプログラムで進行する手法ですが、9月23日という1日のみを3部構成にし、進行していきます。
■全員で、ジェットコースターに乗る
フューチャーサーチは、街で活動する複雑な利害関係や感情も抱え、そこに集い参加する全員が「感情も許し、過去に絶望し、今を認め、その場の空気に身を任せ、現実的に選択をする」という、まるで参加者全員がジェットコースターに乗ったかのような意識で参加することが、その出来に影響を与えます。
基本原則として
・出てきた意見はすべて正当なものである
・未来に焦点をあて、コモングラウンドを明確にする
・「問題」と「対立」は認識されるものであって、“解消”されるものではない。うまく処理しようとしないで、違いを肯定する
とレジュメに書かれ、その意味を田坂先生が解説し、スタートしました。
■タイムラインのワーク“過去”
パーソナル(個人)・ローカル(地域)・グローバル(世界)という3つのカテゴリーの空白の年表に、記憶を辿りながら、100人以上で書き込んでいきます。
ここでは、過去にどのようなことが起きたのか、良いことも悪いことも「認識し、認め合う」ということを一つのミッションとして、進んでいきます。年表を書き込んだあとは、ステークグループで対話を行います。その後、ミックスグループ(予め決められた名簿)で再度共有していきます。
■誇りに思うこと、残念に思うこと“今を認識する”
年表づくりで過去を書きだしたことは、今の「前触れ」を知ること。そこからステークグループで、「誇りに思うこと、残念に思うこと」について対話をしていきます。それは、自分にとっても街にとっても、自分のステークにとっても、どんな内容でも良いのです。
おもしろかったのは、経営者ステークと、行政職員ステークの書いた内容が、使われている言語が全く違っていたこと。言語とは日本語・英語などではなく、業界用語とも違った視点とも言えるような、全く違う内容ということ。ここまでで、第1部終了し、ランチタイムです。
■コモングラウンドのワーク“未来の常識とは”
午前中に過去を洗い出し、良いところも悪いところも、“今”を認める作業を行いました。それは今の常識を知ること。次に、その今に依って立つ未来では、どんな“新しい常識”が実現しているのでしょうか?というワークに移ります。これをミックスグループで対話し、午前中にステークグループで話した内容も棚卸しながら進めていきます。そして各グループで出てきた“新しい常識”を発表します。
そして出てきた未来の“新しい常識”コモングラウンドとは・・・
●山笠が世界中で愛され、山笠ワールドカップが開催されている
●セーフティネットがしっかりし、チャレンジしやすい街になっている
●福岡らしい新しい価値観や仕組みがあり、多様な人がアクションしている街
●地方分権が進み、福岡国独立。憲法第1条:隣人を愛す(スーパーフェイスブックを開発)
●福岡は今よりさらにラテンになっている
●そこそこ楽園(人間関係を重視し、福岡はそこそこなんだよ、というのが常識になっている)
●天神・大濠・百道を繋ぎ「セントラルパーク」の構想
●「ときめく区役所」東区や西区にスポットライトがあたり、区役所が市民活動をプロデュース
●テンジン大学のように市民と行政が共働している
●多様な生き方が尊重されている
●「人生楽しんでる?」気配りができ、自分を尊重
●もっと選択肢やあり、もと発想を大切にする共育が行われている
●1社1部署で働くではなく、2社2部署など、お金を稼ぐ仕事・やりがいのある仕事、と二つ同時に働ける
●ローカルに一人一人がアクションを起こし、グローバルに発信されている
●何かをしてもらったら「すいません」ではなく「ありがとう」と言える
●「オアシス運動」まち全体をオアシスのまちにする
(オはようございます、アりがとう、シつれいしました、スいません)
●良さが残っていてもっと友人を大切にする
●繋がる場をつくる(福岡のいいところは単発で、繋がっていながったから)
■未来のためのアクションプラン“行動を起こす者”
未来の“新しい常識”が生まれたあとに休憩をとり、会場のレイアウトを少し変更し、いよいよ最後のワークへと突入します。最後のワークとは、「話したいことを話す」「高めたい仲間と話す」「やりたいことを話す」です。本当は丸1日かけて行うワークで、具体的に「3ヵ月でやること」「3年でやること」「何をするか」「誰の支援が必要か」「いつまでにやるか」などが明確に出すことができると完璧です。ですが今回は2時間ほどに凝縮した未来のためのアクションプランの時間です。
田坂先生の役目はこれで終えます。ここからはオープンスペーステクノロジーと呼ばれ、それは全参加者に委ねられ、個人のユニークなアイデンティティを生み出し、同時にアイデンティティを与える空間となり、参加者自身が全員へ「提案」できる場です。「私これについて話がしたいです、どなたか一緒に話をしませんか」と自由に全員へ提案し、参加者を募ることができ、集まった人と勝手に分科会を始められるというもの。そして田坂先生が退いて数秒後・・・
ぞくぞくと提案が始まります。恥ずかしさや、緊張感はすでに今までのワークで全員がジェットコースターに乗っている感覚のため、あまり感じないようです。
中央に置いてあるテーブルでテーマを書き、マイクを持って全員へ提案するのです。
若者ばかりかと思いきや、年齢も徐々に上がり、2人で提案する人も出て、結局会場はいたるところで分科会が開催されるカオスの状態になりました。
たくさん出てきて、そして白熱して、ついに時間がなくなってきます。いったん全員と共有するために、現状と分科会の中で出てきた具体的なアクションなどを発表してもらいます。
出てきたアクションプランとは・・・
●なんでもやる係・かっこよく、おせっかいをする
[アクション]twitterで#sewazukiでおせっかいをしたアクションをつぶやく
●教育
[プラン]福岡テンジン大学附属小学校をつくり義務教育で教えられないことを教える
●セントラルパーク構想
[アクション]大濠公園外周のランナーコースをつくる(10kmコース/都市高コース)
[アクション]福岡市長へ提案書
[プラン]唐人町に銭湯
●自転車
[プラン]新しい免許を交付、正しく乗れば加盟店でサービスがあるなどの仕掛け
●農業
[アクション]休耕地を使って、「したい」「繋がりの場」をつくる
●公共交通
[プラン]複雑なバスのコンシェルジュ
●変会
[プラン]多様性を認め合い、No.1を増やす
[アクション]福岡ヘンジン大学(twitter、#henjindai)
●一人旅同盟
[アクション]HAKOZAKI(箱崎)にゲストハウス・ドミトリーを増やす
●音楽都市
[プラン]カフェを活動スペースに、音楽家やコミュニティを育てる活動
●起業(お店ビジネス)
[プラン]テーマ性あるお店をそれぞれで構想
●Lovely
[アクション]福岡ラブリー部発足、ラブリーウィークなど
●朝飯
[アクション]朝飯を食べモチベーションをUPなどの活動
●アジアの玄関口というトラウマからの脱却
[プラン]アジアの茶の間→普段着交流
[プラン]アジアの勝手口→普段着でまかない飯
●そこそこ化と地域通貨
[アクション]今集まったメンバーで人材劣化をしない方法を探る話し合いを定例で行う
という具体的なアクションやプランが発表され、授業が終わりを迎えます。
そして最後に、私・岩永から参加者へ伝えたかったことを発表。それは、「あなたがいればカタチが変わる」というキーワード。それは家族においても、職場においても、そして街においても一緒です。あなたという人が過去を認め、今を認識し、未来の新しい常識をイメージしたそのときから、あなたは“自分ごと”として行動を起こすでしょう。それを体現した今回の記念授業は、参加した人が誰一人としてかけていたらこのカタチにはならなかったのです。未来は決して暗くない、自分がいればカタチは変わっていく、主体的に関われば関わるほど・・・。
授業が終わり、最後に感想を。
今回の1周年、時間がない中、本当に忙しい中、企画を一緒に進めていただいた田坂先生に感謝です。そして、当日しっかりと準備・受付・誘導を行い、最後にビシっと片づけてくれ、丸1日参加してくれたスタッフのみんなに感謝です。そしてそして、3連休の初日という天気の良い日に、市役所に缶詰になって参加してくれた街の学生や招待した方々に、本当に感謝しています。皆さんの参加により出てきたアクション・プランを、これからのテンジン大学でどう育てていくかが、僕のこれからの使命(宿題)となりました。
最後にスタッフで集合写真!みんな、ありがとう!!
(学長 岩永 真一)