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レポート日記

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まちなかピクニック~福岡の史跡をあそぼう!~

開催日:2019年04月27日

通常授業

日々の生活の中で「歴史を感じる」こと、ありますか?

 

学校の授業に。テレビドラマに。小説の中に。

あるいは、おばあちゃんの昔話に・・・。

 

「昔こういうことがあった」「昔こういう人がいた」という事実は知っているけど、自分たちが生きている時代と直接の繋がりを感じたことは少ないなぁ。それに、自分の住んでいる地域や歴史について知りたいけど、そういう機会って実際あまりないよね。歴史ある場所に直接体験しに行けたらいいなー。

 

ということで、今回の授業「まちなかピクニック~福岡の史跡であそぼう~」は、福岡が誇る名城、福岡城にて開催されました。

 

当日は、初夏にぴったりの澄みきった青空。朝10時、福岡城南丸多聞櫓(たもんやぐら)に集合でした。

 

 

今回の先生は、福岡市経済観光文化局文化財活用部の赤坂亨(あかさかとおる)さん。

普段は、福岡城における歴史的な文化財の保存・整備・活用などを行っておられます。

 

 

「福岡城はかつて47の櫓がありました。今、皆さんの目の前にある多聞櫓は築城時から現存する唯一のものです。普段は非公開ですが、今日は特別に中でお入りいただけます。ぜひ壁や建物に手で触れて、身近に感じてください」

 

生徒さんに今回参加された理由を伺うと、「福岡城の近くで育ったけど、お城については全く知らないから」「福岡城自体に初めて来ました」「歴史が好きで」というお声が多かったです。皆さんかなりお城が気になって来られたご様子。スタッフも一緒にわくわくしながら、横に長い構造をした平櫓内に入ります。

 

 

まず見応えがあるのが、櫓を貫いてすーっと伸びるこの通路。南北に63メートル続く平櫓の中は、16の部屋に分かれています。建設当時は壁が無く、すいすい行き来できたようですが、平和な時代が続くにつれ櫓としての目的は薄まり、倉庫として使用するため仕切り壁をつけたそう。時代ごとに求められる役割が変わっていくこともあるんですね。面白い。

 

1部屋ずつ足を進めながら、赤坂先生が櫓について色々な説明をしてくださいました。その一例、屋根について。建物内からよく見ると、編んだ竹の上に土をかぶせ、その上に瓦を乗せた型式でできていることが分かります。お城の建物としては少し簡易すぎる気がしますが、先生、これは?

 

「戦いのための建物なので損傷するかもしれませんから、ローコストを意識して建てたようです。色んな設備がとても実用的になっていますよ」

 

なるほど。私たちもコスト削減を意識することありますもんね。

 

考えてみれば当たり前のことですが、歴史上の人物や昔の方々って自分たちと同じように考えたり、悩んだりしただろうということって想像しづらいですよね。歴史の教科書でも「Aと言う人物がBをした」みたいに結果がすぐ分かるので、その間あったかもしれない色んな考えや迷いが省略されて、あまりリアルな人間に思えないというか。それが、目の前の屋根1つから当時の人たちの考えや状況が浮かび上がってくるのは、「私たちもそういうことあるなぁ」と共感できる、今までにあまりない体験でした。

 

 

天井を横切るこの柱も通常、住居などには使われにくい曲がった木材。

 

「補修の時も、同じような木材、同じような技術で作ってくださいと業者さんにお願いしています。建物そのものだけでなく、当時の大工さんの技術も保存しています」

 

櫓の真ん中あたりの部屋で足を止め、天井を見上げると、柱のところに流々と書き込まれた墨文字を発見しました。嘉永6年、1853年に櫓が建て替えられた際、関わった大工達の署名です。力強く堂々とした筆遣いから、お城の工事に関われることをとても誇りに思っていただろうことが感じられます。

 

先生の説明に初めて知った!となることも多く、生徒さんからも質問が多く飛びました。

 

「窓が無い部屋では隅っこの床板が外され、そこから石垣が見えているのはなぜですか?」

→「石垣を上ってくる敵や不審者に石やお湯などを落とすためです。石落としと言います」

 

「平櫓はわざと真っ直ぐに作られたのですか?」

→「櫓は石垣に合わせて作るので、実は真っ直ぐじゃないんです。横から見てみると、緩やかに曲がっているのが分かりますよ」

 

その他、オートロック型の鍵をつかっていたこと、瓦製作の技術が上がって瓦がどんどん重くなっていったことなど、当時の人の工夫、知恵に感心しきりの見学でした。

 

 

多聞櫓をたっぷり堪能したあとは、櫓下の石垣まで移動しました。

 

ここからは、参加者全員で石垣の草取りに入ります。石垣に生えた草を放置すると、そのうち根が張り、石垣がゆるんで崩れる危険性があるそうです。普段は専門業者が定期的な除草作業を行い,また,有志の方が休日に集まって草取りすることもあるのだそう。生徒さんとスタッフ、めいめいに鎌や剪定ばさみをもち、草取りスタート。

 

(※普段は石垣を登る事は禁止されています)

 

これがとれるとれる、草が。

 

生徒さん・スタッフ・先生方で力を合わせて、草や根をじゃんじゃん刈っていきます。みなさん汗をかきながら「とれるところは全部とりたい!」「ここも綺麗にしよう!」と非常に積極的でした。自分たちで石垣を綺麗にしていくと、だんだんと石垣自体に愛情が湧いていきます。

 

(写真上:作業前 写真下:作業後)

 

あっという間にこんなにすっきり!

 

作業前・作業後を比べると草の差が歴然ですね。みなさんの草取り力、すごい。作業後は、赤坂先生が石垣の説明もしてくださいました。みんなで石にもどんどん触って、大きさや素材の違い、切り出した時の跡なども発見しました。

 

最後に赤坂先生より、「今日皆さんが櫓や石垣にじかに触れて頂いたことで、これからは、前とは違った目線で見て頂けるのではないかと思います。少しでも愛着を持っていただければ嬉しいです。」と笑顔で言っていただきました。

 

授業後は参加者全員でお弁当タイム。天気もよく、草取りでお腹が減ったせいか、いつも以上に美味しい時間でした。

 

 

自分たちで綺麗にした石垣をバックにパチリ。

 

 

今回の授業のように、自分の目で見て、手で触れると、遠く感じていた歴史的建造物や、その奥に居る当時の人たちが身近になった気がしました。それに、石垣のメンテナンスをお手伝いしたことで、ほんの少し、歴史に携われた気がして嬉しく感じました。歴史を感じることって実は難しくないんじゃないのかな、と思った授業でした。

 

また、テンジン大学では歴史好きが集まった「レキ✕テン」というサークルがあります。

 

今後、歴史にまつわるイベントを催す予定です。

そちらもお楽しみに!

 

 

<この授業のスタッフ>

Report 瀬戸 晴加
Photo  近藤 茜
Staff  松本 桃果、光石 隆憲

【今回の授業のコーディネーター】

まちなかピクニック~福岡の史跡をあそぼう!~

岩永 真一

1981年、福岡市出身。広告業界でプランナーを経験し2009年に独立。大学生のときから街のそうじをしているグリーンバードに参加していたのをキッカケに、天神のまちづくり団体:We Love 天神協議会へ参画。独立したのをキッカケに福岡テンジン大学を企画し、2010年9月に開校・学長を務める。現在は、週1会社員・週1大学の教員など、複数の職場・仕事・プロジェクトに関わるパラレルキャリア(複業家)の働き方。

岩永真一ブログ

 

【今回の先生】

まちなかピクニック~福岡の史跡をあそぼう!~

福岡市 経済観光文化局 文化財活用部

福岡市は紀元前4世紀ごろの水稲耕作の伝来で日本最古の遺跡があり、この頃より大陸との交流から多くの文化が入ってきた土地柄。日本で唯一発見された金印や鴻臚館、うどん・そば・まんじゅうの発祥、お茶の伝来など交流で栄えてきた。それら歴史的な有形・無形の文化財の保存・整備・活用などを行っている。

 

<WEBサイト>

http://bunkazai.city.fukuoka.lg.jp/

【今回の教室】

まちなかピクニック~福岡の史跡をあそぼう!~

福岡城跡

関ヶ原の戦いの恩賞で筑前国福岡52万石に移封された初代藩主黒田長政が、慶長6年(1601)から7年がかりで築城した城で、舞鶴城ともいう。

天守閣はなく大中小の各天守台と47の櫓があったという。本丸、二の丸、東二の丸、南二の丸、三の丸で構成された内城部分は、国指定史跡。多聞櫓(重要文化財)、伝潮見櫓(県指定建造物)、下の橋大手門(同左)、祈念櫓(同左)、母里太兵衛邸長屋門(同左)、名島門(市指定建造物)が保存され、大天守台は展望台になっている。

 

住所 : 福岡市中央区城内

 

■Webサイト

http://bunkazai.city.fukuoka.lg.jp/cultural_properties/detail/62

 

■アクセスマップ