レポート日記
一覧に戻る「福岡にあるアナタの知らない世界」 ~“塀の向こう側”から来た4人の女性のものがたり~

開催日:2019年10月26日
通常授業
“塀の向こう側”とは、刑務所や少年院のこと。
今回の授業では、このクローズアップされにくい世界について先生方にお話を伺いました。
犯罪の約半分が・・・
犯罪に関するとある数字。「48.7%」―何の数字だと思いますか?
これは、被害者を生んだ刑法犯で検挙された人の数における再犯者の割合です。なんと、被害者を生んだ犯罪の約半数が再犯なのです。
また、刑務所を出所した人のうち、「17.3%」の人が2年以内に再び刑務所に入るそうです。
実は、犯罪自体は減少傾向であるものの、再犯率は少しずつ上昇しています。
なぜか―。
そこには、「立ち直り」への壁があるのです。
「立ち直りたい」と思う受刑者と4つの壁
刑務所等の出所を控えた受刑者へのアンケートで、「もう二度と犯罪はしない」と回答したのが84.9%、さらには「出所後はきちんと仕事をして規則正しい生活を送りたい」と回答したのは77.8%。多くの受刑者が「立ち直りたい」を思っているが、
・孤独、相談相手がいない
・薬物依存がある
・高齢である、障害がある
・住むところがない、仕事がない
といった壁があるそうです。
その解決のために、国も法律をつくり、自治体も再犯防止のための計画を策定するなど取り組みを始めており、立ち直りを支えるためには、私たちが“塀の向こう側”からどうバトンを受け取ってくのか。それを社会全体で考える必要がありそうです。
“塀の向こう側”のお仕事
ここから、“塀の向こう側”のお話を4人の先生方から伺いました。
先生方はそれぞれ、過去に長く刑務所等で働かれたご経験のある方、また現在働かれている方です。
先生方には、
・この世界に就職をしようと思った理由
・就職前後でのイメージギャップ
・働きやすさ、労働環境
・仕事の難しさ、悩み
・ターニングポイント
などをお聞きしましたが、
「勢いで就職した(笑)」「医療の仕事をしていて転職した」という就職の経緯や、「スムーズに社会に復帰できるよう」という受刑者への想い、ときに同僚の皆さんで愚痴を言い合うこと、休日は普通に天神で買い物をしていることなど、皆さん本当に率直に、ざっくばらんにお話ししてくださり、会場も和やかな雰囲気となりました。
お話の中では、この世界の仕事の難しさなども教えてくださいました。
受刑者の立ち直りのために仕事をしているが出所後のことはわからないため仕事の成果という意味では見えにくいということや、ときに受刑者から暴言を吐かれたりすることなど。
皆さんそれぞれのお立場で、日々受刑者と向き合っていらっしゃいます。
私たちへ伝えたいこと
そんな受刑者と向き合う中で、ある受刑者が次のように言ったそうです。
「出所せずに、ここにいたい。ここだと話ができるから。挨拶できるから」と。
「戻りたくないといわせてしまう社会って、何なんだろう」と考えさせられると、そんなことも教えてくださいました。
出所後、元受刑者の立ち直りを支えるために何が必要ですか?
とお尋ねしました。
すると、
「もし、元受刑者に出会ったら『こんにちは』って挨拶してほしい。とにかく普通に接してほしい。ただそれだけです」
と。
ただ、それだけ。
今回特に印象に残ったことでした。
先生方のお話のあとは、質問タイムを経てグループディスカッションを行いました。
先生方も各グループに入っていただき、皆さん積極的に質問したり意見交換が行われていました。
今回の授業は、「立ち直り」を支える社会ってどんな社会かを考えさせられる機会となりました。
元受刑者には「ただ普通に接してあげてほしい」という先生の言葉、想い。
「社会」って何なんでしょうか。私たちは、どう受け止めて、どう行動できるのでしょうか。
私たち一人ひとりが、いつか立ち直りを支える「当事者」になったとき、「おはよう」「こんにちは」と挨拶できれば、社会は変わるかもしれません。
〈この授業のスタッフ〉
Report 山下千春
Photo 吉開崇人
Staff 天尾裕作、西南大生4名
【今回の授業のコーディネーター】

三根 一晃
福岡県生まれ。経営者団体、スタートアップを経て、株式会社バウンディングパルスにジョインし、主に企業の採用支援に従事。テンジン大学には開校当初から参加し、ファンドレイジング局で個人サポーター制度(現ファンクラブ)を立ち上げた。妻と娘と息子の4人家族。
【今回の先生】

福岡矯正管区のみなさん
福岡矯正管区は,法務省矯正局の地方支分部局として、九州・沖縄地方に所在する矯正施設(刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所)を管轄し、これらの施設の適正な管理運営を図るための指導・監督・調整等を業務としている。これら矯正施設には、いわゆる看守と呼ばれる刑務官、少年たちの立ち直りを支えている法務教官のほか、作業専門官、教育専門官、調査専門官、福祉専門官、医師、薬剤師、看護師等の専門分野の職員も配置されており、立ち直りをめざす収容者のためにたくさんの人たちがかかわっている。
【今回の教室】

森のコミュニティルーム
便利に近く、喧騒からは遠い。大博通りにある福岡パーキングビルの最上階にある「森のコミュニティルーム」。博多駅を眺めることができる都心にありながら、森の中で過ごしているような空間。リラックスできる環境で、大切なミーティング、作品のお披露目会、仲間とゆっくり語り合うコミュニケーションの場など、あなた次第で多彩な目的で利用できる場所。このコミュニティルームには、Room1「陽の森」とRoom2「風の森」がある。
「陽の森」
角部屋、二面採光の広い窓から射し込む自然光に満ちた開放的なコミュニティルーム。窓辺には小上がりがある。
「風の森」
室内の空気を浄化する効果がある貝殻を含んだ漆喰の壁で、ほどよい広さと明るさ、窓を開ければ心地よい風が吹き込む。
住所 :福岡市博多区綱場町1-17
電話 : 092-271-5022
営業時間 :
平日/8:00~21:30
土日祝/8:00~19:30
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