レポート日記
一覧に戻る預けられた「家」で生きる子どもたち 〜映画『大きな家』上映会 × トークショー × 対話会〜
開催日:2026年03月28日
通常授業
みなさんは、「児童養護施設」と聞くと、どのようなイメージを持ちますか?
今回の授業では、児童養護施設を舞台にしたドキュメンタリー映画『大きな家』の上映に加え、施設関係者や当事者によるトーク、そして参加者同士の対話を通して、「家」や「家族」のあり方について多角的に考える機会となりました。
映画『大きな家』は、児童養護施設で暮らす子どもたちの日常を長期間にわたって記録したドキュメンタリーです。カメラは特定のストーリーや結論を押し付けることなく、子どもたち一人ひとりの表情や言葉、そして何気ない日常の瞬間を丁寧にすくい上げていきます。そこには、仲間と過ごす穏やかな時間や笑顔がある一方で、ふとした沈黙や遠くを見つめるまなざし、言葉にならない感情も映し出されており、「施設で生きる」という現実の複雑さが静かに伝わってきます。

©CHOCOLATE Inc.
上映後のトークセッションでは、福岡市内の児童養護施設「福岡子供の家」施設長の松﨑さんが、映画に描かれた子どもたちの姿について「非常にリアル」と語り、施設内での人間関係の葛藤や感情のぶつかり合いが実際にも存在することを共有してくださいました。一方で、同じ空間に暮らしていても「家族」とは捉えず、あくまで関係性は多様であるという現場の視点も印象的でした。

また、児童養護施設での生活経験を持つ中尾さんは、自身の経験と映画を重ねながら「概ね現実に近い」と述べつつも、外泊や個々の感じる不条理など、描ききれない側面にも触れてくださいました。さらに、自身の過去や海外での体験を踏まえ、「幸せ」の感じ方は環境によって大きく異なること、そして逆境を経験したからこそ他者の幸せを願える可能性について語ってくださいました。
MCの園田さんからは、映画が意図的に「物語化」を避け、ありのままを映し出している点への言及があり、観る側に解釈を委ねる作品の特徴が共有されました。また、「人はどうすれば幸せを感じられるのか」という問いを起点に、社会全体で家庭や子どもを支える必要性について議論が深まりました。松﨑さんは「こどものために」ではなく「こどもとともに」という視点の重要性を強調し、予防や支援の名のもとに子どもの選択を奪わない関わり方の必要性を語ってくださいました。

後半の対話会では、「映画を見る前後でのイメージの変化」をテーマを中心に参加者同士が意見を交わしました。施設は想像以上に整った環境であるという声がある一方で、見えない部分の葛藤や深刻さに思いを馳せる意見もありました。また、実際に寮生活を経験した参加者からは、共に暮らす人々は「家族でも他人でもなく仲間だった」という言葉が共有され、施設での関係性の独自性が浮かび上がりました。
本授業を通して、「家」とは何か、「幸せ」とは何かという問いに対する答えは一つではなく、それぞれの経験や立場によって形づくられるものであることが示されたと同時に、子どもたちが安心して育つことのできる社会のあり方を、私たち一人ひとりが考え続ける必要性が強く感じられる時間となりました。
参加した学生さんからは、
「自分の中での児童養護施設の偏見がなくなりました。」
「家族のあり方、生まれてきた意味、子育て、教育、環境について考えるきっかけになりました。」
などの声が聞かれました。

厳選された話題作からアート系作品、心温まるヒューマンドラマまで、幅広いラインナップを上映し、映画を“じっくり味わいたい”人にピッタリのkino cinéma天神さん。
ぜひみなさんも足を運んでみてください。
<STAFF>
Report 前田
Photo 三根
Staff 池田、里村、白倉、與小田
【今回の授業のコーディネーター】
前田 也詠子
2000年福岡市生まれ。西南学院大学文学部外国語学科英語専攻卒。大学2年から福岡テンジン大学のボランティアスタッフとして参加しており、「ふくおか対話と学び学園祭」や「ふくおか夜なべ談義」、大学生の学び場「Liberal Arts Program for Next Leaders(通称:LAP)」の事務局を担うなど、対話を主軸とした活動に力を入れている。現在はアート販売の仕事に携わりながら、毎日イラストを描いたり、「アート×対話」のワークショップ作りをしたり、日々自分のやりたいことを楽しんでいる。
<Instagram>
プライベート用
https://www.instagram.com/lap_maeko/
イラスト投稿用
https://www.instagram.com/maekogram/
Liberal Arts Program for Next Leaders
【今回の先生】
まちのみなさん
福岡のまちに暮らす・働く・遊ぶヒト、参加者みなさんひとりひとりが先生です。
【今回の教室】
kino cinema天神
kino cinema天神は、天神の喧騒から少し離れた静かな空間で、ゆったりと映画体験ができる、大人のためのシアターです。厳選された話題作からアート系作品、心温まるヒューマンドラマまで、幅広いラインナップを上映し、映画を“じっくり味わいたい”人に最適です。フランスの街並みをイメージした、シンプルで落ち着いたロビー、ゆったり座れる快適なシートに大きなスクリーン。「映画を観る時間そのものが心地よい」と感じられる鑑賞環境が特徴です。映画を通して新しい発見や感動を提供し、日常に小さな豊かさや刺激を加えてくれる場所——それがキノシネマ天神です。
住所:福岡県福岡市中央区警固1-15-38 カイタック スクエア ガーデン3F
電話:092-406-7805
営業時間:10:00~22:00 ※ただし、公開作品の上映時間によって変更します
■WEBサイト
kino cinéma(キノシネマ)天神 by 木下グループ
■アクセスマップ



