レポート日記
一覧に戻る天神を歩けば、コウモリの声が聞こえる?!~天神いきもの観察会~
開催日:2012年06月23日
通常授業
6/23(土)、しっとりと濡れた空気の過ごしやすい曇り空のお天気は私達だけでなく、植物や人間以外の動物も過ごしやすそう。そんな空の下、今回は天神中央公園~水上公園周辺にて「いきもの観察会」が行われました。
先生は、有限会社クラバードの田村耕作さんとサポートとして生田哲朗さんにもご協力いただきました。田村先生は福岡県自然観察指導員協議会事務局などをつとめていらっしゃり、人間中心の生活のため少しずつ元気をなくしつつある地球を、元気な状態で未来の子供たちに手渡せるよう、環境に優しい生活を普及させる活動などを行っています。
本日の流れなどをお知らせした後、早速いきもの観察へレッツゴー♪
◆◇天神イムズ周辺◇◆
はじめに、集合場所である中央公園から道路を渡って、天神イムズ横の緑地に移動しました。
私達が普段何気なく目にしているこの植え込み…実はここの設計のコンセプトは「里山」で、かつての天神周辺の里山に生息していた植生を再現しているんです!
そんな緑地の基礎はコンクリートではなく泥と砂を固めて作っていて、雨をゆっくり浸透させることが出来るそう。生徒さんからも「そうなんだ!」という声があがり、皆さん興味津津な様子でぺたぺたと触っていらっしゃいます。
植えてある植物は里山に生息しているシイタケの原木となる「コナラ」、天ぷらにするととっても美味しい「ユキノシタ」や「ワラビ」、秋に実がなる「カキ」や夜になると葉っぱが閉じて寝てしまう「ネムノキ」など、一度は耳にしたことのあるものがたくさん!
植物の説明を聞くたびに生徒さんから「これ、なんか見た事がある!」「へー、これがカキなんだ!」「あ、ほんとだ、ワラビだ!」といった笑顔と驚きの声が聞こえました。
それぞれの植物について名前と特徴を教えていただくことで、単なる「植物」という認識から、「意味やものがたりを持った個別の植物」へと変わっていきますね。
~「里山」のお話~
「里山」とは人間の影響を受けた生態系が存在する山、つまり人里近くにある「人間が作り出した山」です。そこで植えられる草木は「食べられる」ということにこだわって選ばれることが多いそう。実際にイムズ横の緑地で見られた植物も食べられる(しかも美味しい)ものが非常に多かったのが印象的でした。
そんな人々の知恵が詰まっている「里山」にある植物について、昔の人は多くの知識を持ち、日々の食生活に活かしていました。現在では「野菜はお店で購入する」という人がほとんどだと思いますが、食の安全に関する意識が非常に高くなっている現在、今後はこういったスタイルが見直されるかもしれませんね。
◆◇中央公園◇◆
さて、再び中央公園に移動して植え込みや樹木についてお話を伺います。
移動中でも皆さんの目は自然と「観察者」のものとなっています。「あ、なんかあの木もじゃもじゃしてかわいい!」「これって何かな?よく見かけるけど…」など活発に会話が繰り広げられました。
~~木に住む巻貝?~~
「ちょっとこの木のここ、見てみてください。」
そう先生がおっしゃって生徒さんが木をのぞき込みます。なになに?何がいるのでしょう??
「ここに陸生の巻貝がいるよ。木の表面がテカテカ、キラキラしているところは巻貝が移動した跡です。」
えー、巻貝が陸に??そう思って見てみると確かに小さな巻貝が。これはキセル貝の仲間で、樹木の隙間など湿った所に生息しているんだとか。雨が降ったら表面に出てくるそうです。同じキセル貝の仲間には「カタツムリ」や「ヤマタニシ」がいます。
ところで、彼らは何を食べて生きているのでしょうか?正解は「コケ」。このコケとは、空気がきれいな所ほど種類が多く、その土地の空気の様子をはかることができるそうです。
とある生徒さんが「こんな隙間にも命があるんだね」とおっしゃっていたのが印象的でした。
~~コウモリ観察~~
日が段々と暮れ、薄暗くなってきたのでついにおまちかねのコウモリ観察!こちらが本日使用する「バット・ディテクティブ」というコウモリの声を聞くための装置。
コウモリが出す超音波は、私達には聴くことのできない周波数となっています。それを人間の耳が捉えることのできる周波数の音に変えてくれるのがこのバットディテクティブです。コウモリの中でも種類によって周波数は少しずつ異なり、ダイヤルを回して捉える周波数を調節します。ちなみに今回調査する種類はアブラコウモリです。
さてさて…コウモリはいるでしょうか…
「あれ!あれって違うかな?」
…残念、スズメでした。
「あ!!あれは?」
…うーん、あれもスズメ。
なかなかコウモリの声が聞けないなあ、そう思ったその時!!
バットディテクティブから反応が!
「ピチピチピチ…」
「あ!!!いたいた!!!!!」
ついにコウモリが登場し、皆さんのテンションは最高潮!
コウモリは単独行動で飛び方も不規則なため探すのは大変でしたが、先に装置が鳴き声を拾ってくれるので「ピチピチピチ」という声が聞こえるたびに皆で空を見上げ、その姿を探しました。
また、コウモリ探しの間にも橋に植えてあるナデシコの花や、川沿いに生えているクコ、神社の中にあるアボガドなどについて先生からお話を伺いました。
~~コウモリについて~~
漢字で書くと「蝙蝠」と書くコウモリはその漢字から古くから幸福を招く動物とされ、その縁起の良さから企業のロゴなどのモチーフとして使用されてきました。
しかしながら、皆さんコウモリというとなんだか少し良くないイメージを持っていませんか?そのイメージの元となっているのは欧米における「コウモリ=吸血=バンパイア」という方程式。でも日本にいるコウモリの大半は虫を食べる種類で、あとの残りは果物を食べるものです。しかも、海外に生息している吸血コウモリも血を吸う、というより動物の傷口から血をなめるに近いのです。生徒さんからも「そうだったんだ!」と驚きの声があがっていました。
◆◇赤煉瓦にてふりかえり◇◆
野外観察が終わったあとは赤煉瓦文化館にて本日の振り返りと感想の共有をしました。
まず先生から野外観察において注意しなければいけない生きものについて教えていただきました。「スズメバチ」、「毒ヘビ」、「ウルシ」、「とげのあるイモムシ」…どれも本日はいませんでしたが、これからもいきものの観察をする場合には気をつけなければなりませんね。
次に、食物連鎖からみた生態系バランスのお話を伺いました。
これはいきものの絵が描かれた紙コップをピラミッド状に重ねて表現された生態系。
「食べる・食べられる関係」で私達人間を含めた全てのいきものの世界は成り立っていて、どこからのバランスが崩れてしまうと必ずどこかにその歪みが現れます。
現在福岡ではイノシシなどの哺乳類が非常に増加しているそうです。もしかしたら、どこかのバランスが崩れてしまっていることの表れかもしれません。
その後、皆さんに本日の感想をフセンに書いていただき共有をしました。
「いつも上を見て歩かないので気付かなかったが、アクロス山がすごい。」
「自然の力強さを感じました。」
「コウモリなど、都会にはいないと思っていた物がいることに驚き、そして身近な動物だと感じました。」
など、様々な感想を頂きました。
◆◇おわりに◇◆
コウモリは日本の哺乳類の3~4割の種類を占めていますが、生息できる環境が限られた非常にナイーブな生き物で、現在絶滅が危惧されているものが非常に多いいきものだそうです。また、他の動物や植物も人間の開発によって簡単に姿を消してしまう可能性があり、生態系いきもののバランスを考えず便利さだけを追求してしまうと、いきもの同士が複雑に絡み合って成立している「生態系のピラミッド」は簡単に崩れて取り返しのつかないことになってしまうかもしれません。
…少し話がおおきくなってしまいましたが、天神の街に一体どんないきものが生息しているのか。彼らはどのような生活をしているのか。そういったことに皆さん一人一人が思いをはせることで、私達の天神が私達を含めた動物や植物といった「いきもの」皆にとって暮らしやすい街になると良いですね。
観察を通して生徒さんが素敵な笑顔を浮かべていらっしゃったのが印象的でした。様々ないきものに目を向けることは、私達を優しい気持ちにさせてくれますね。
本日は沢山のご参加ありがとうございました。
(ボランティアスタッフ 関 美穂子)
【今回の先生】
【今回の教室】
住所 : 福岡市中央区天神1丁目1